食道癌、胃癌に対しては、手術のほか、化学療法、放射線治療を組み合わせることで、根治を目指します。昨今、その治療の進歩により、安全性、有効性が向上しています。効果のある治療を、本当に必要な患者様にのみ行うことが重要である一方で、体内に腫瘍が残っているかについては、現在の内視鏡検査や、CT検査、PET検査で完全にとらえることは難しいのが現状です。
私たちは、食道癌や胃癌の有無を、血液や、尿といった体液中の、DNAやRNAから判断する(リキッドバイオプシー)手法確立を目的として、研究開発を進めています。近い将来、リキッドバイオプシーにより腫瘍の有無を判別することが可能となれば、手術後の再発率を精度高く予想することができ、手術後の補助化学療法(手術後に再発率を下げることを目的として行う化学療法)を必要としない患者様がわかる可能性があります。さらに、化学療法や放射線療法が著効した結果、手術を回避できる患者様、あるいは治療前には多臓器転移を有してしていたにも関わらず、化学療法が著効し、癌を治す(根治)治療を目指すことができる患者様がわかる可能性があります。現状は、4-6か月毎に、CTや内視鏡検査のために必要な通院も、リキッドバイオプシーに置き換えることができるかもしれません。
いずれも、今後の研究成果次第ではありますが、日々食道癌、胃癌の患者様の診療にあたりながら、少しでも治療成績を向上させ、その負担を軽減すべく、研究活動にも従事しております。何かご質問等がございましたら、いつでも担当医にお申し付けください。
これまでの手術は開腹手術や開胸手術が主に行われてきておりましたが、創縮小,出血軽減,術後疼痛軽減,早期回復などの利点があることから、近年低侵襲手術として腹腔鏡や胸腔鏡手術といった内視鏡手術が用いられ始めております。また、さらに最近ではロボット支援下手術が急速に普及しております。しかし、高難度の手術では高い合併症率を認めているのが現状です。
近年では人工知能(Artificial intelligence, AI)を用いた新しい画像診断の技術が進歩しております。外科領域においても研究が進んでおり、重要な解剖構造を手術中に外科医にわかりやすく表示したり、手術の進行状況を予測することによって合併症の軽減やスムーズな手術室管理につながることが期待されております。このようにAIを用いることで術中支援を行なったり手術室支援を行ったりするシステムが確立されれば、臨床的意義はとても大きいと考えられます。我々は合併症軽減および医療従事者の負担軽減を目指して、AIを活用した手術支援システムの開発を目指しております。まだ研究段階ではございますが、何かご質問等がございましたら、いつでも担当医にお申し付けください。
人工知能を用いて手術中に重要な臓器を自動認識するシステムの開発を目指しています。
臨床研究において、診療で得られたデータ等の情報や余った検体のみを用いる研究については、国が定めた倫理指針に基づいて、対象となる患者さんから直接同意を受けない場合がございます。この場合、あらかじめ研究内容の詳細をWebサイトにて公開することで、患者さんが拒否できる機会を設けており、このような方法を「オプトアウト」といいます。慶應義塾大学病院 一般・消化器外科にて実施しているオプトアウトを用いた研究については、こちらをご覧ください。
食道癌診療ガイドラインは、全国の一般臨床医が食道癌診療を行う際に診療方針を決定するために必要な情報を提供することを目的に作られています。さらに、食道癌診療に携わる医師以外の医療従事者、患者様、ご家族にも食道癌診療の概要を理解してもらえるよう作成されております。このように、日本の食道癌治療の根幹となるガイドラインでありますが、委員長の北川雄光教授を筆頭に当院から多くの医師がガイドライン作成に関与しており、慶應義塾大学病院はまさに食道癌治療において日本の最先端に位置しております。当院ではガイドラインに則り、患者様一人一人に最適の医療を提供できるよう尽力を注いでまいります。
上部消化管班では当大学医学部長承認のもとで臨床研究を主導して、また他施設と協力して行っています。 臨床研究とは、患者様にご協力頂き、病気の原因の解明、病気の予防・診断・治療の改善、患者様の生活の質の向上などのために行う医学研究を指します。現在世の中で使われているお薬や治療は、多くの患者様のご理解とご協力のもとに行われた、臨床試験の成果により生み出されたものです。
上部消化管班は日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG:Japan Clinical Oncology Group)の「認定参加施設」として、食道疾患に対する高度な医療の提供とともに、標準治療の確立に貢献していることが特徴です。
がん患者様の治癒率の向上を目指して発足した、多施設共同研究グループです。
有効な治療法を開発し、これを適正な臨床試験による評価を行うことにより、様々ながんの患者様に対する標準治療(科学的根拠に基づいて第一に推奨される最善の治療)の確立を目的として研究活動を行っています。
この研究活動を通して、各種がんの治癒率の向上とがん治療の質の向上を図ることを目標としています。
※JCOGホームページより
上部消化管は、JCOGの食道癌グループに発足当時より関わっており、初代グループ長を当班の安藤暢敏先生(現国際親善病院院長)が務め、前グループ代表者を当科の北川雄光教授が務めておりました。
2023年度より、当班の松田助教がグループ事務局に加わり、川久保准教授、当院消化器内科の平田専任講師も継続してグループ代表委員として、食道癌の治療開発に携わっております。
日本の最前線の食道癌診療施設の一つとして、患者様への最適な治療の提供と、次の世代に向けた治療開発を行っております。
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