JUNNYA
AOYAMA
所属
済生会横浜市東部病院
卒業年度
2013年卒
「将来の夢:外科医になること」
小学校の卒業文集に書いた将来の夢です。親戚に医師がいたわけでも、病院によくかかっていたわけでもないのですが、私は幼少の頃から、医師という職業に漠然と憧れを抱いていました。当時は医師の専門分野もそれほどよく知らなかったと思いますが、患者さんの命に直接関わる仕事がしたいからと外科医になることを夢とし、ただしその責任は重く普通の何十倍もの努力が必要だろうと記していました。20年以上経った今でもその想いは変わっていません。医学部卒業時点では自分は迷わず消化器外科に進むだろうと考えていましたが、初期研修で各科をローテートすると困りました。どの領域も本気で取り組むと面白いのです。最終的には原点回帰、守備範囲が広く、全身管理も必須の、理想の医師像に一番近い一般・消化器外科を選びました。北川雄光教授や川久保博文准教授とは学生の頃からご縁があり、母校の慶應義塾大学医学部外科学教室に入局しました。
入局後、外科医としての最初の2年間は市中病院で研修することになります。手術は、ヘルニア、虫垂炎、胆嚢炎からはじまり、大腸、胃、乳腺、膵臓、肝臓、肺、食道に至るまで、ありとあらゆる臓器の執刀を経験させていただきました。入院中はもちろんのこと、術後外来でのフォローまで主治医として診させていただくことは、自分の持ち得る力を総動員する必要がありました。最初はその重責に押しつぶされそうになりましたが、先輩方やコメディカルの方々、そして時には患者さんにも支えてもらってなんとか乗り越え、何にも代え難い貴重な糧となりました。手術以外に関しても、化学療法、上部/下部消化管内視鏡、ERCP、穿刺ドレナージ等、数多く経験させていただきました。入局して最初の2年間で、外科医として飛躍的に経験値をあげることができたと感じています。ここまで多くの経験を積ませていただける研修プログラムは非常に稀有なのではないかと思います。
次の3年間(院生の場合は4年間)は大学病院で修練する期間です。大学に戻ると“モードを切り替えて”研鑽を積んでいきます。私は上部消化管班に入班するとともに、がんプロフェッショナル養成プランという臨床系の大学院に進学しました。Academic surgeonを目指して、臨床だけでなく、学会発表や論文作成にも力を注ぎます。大学には、Academicな活動にあたってこれ以上ない環境が整っています。最先端の治療に基づく診療データがあるだけでなく、身近に活躍されている先輩方がいらっしゃるので、先輩の背中をみながらついていけば自分ひとりでは決してなし得ない成果を挙げることができます。また、上部消化管班の先輩方が築き上げられてきたご功績の恩恵を受けて、早いうちから海外学会や上級セッションでの発表等、大きな経験をすることができますし、タイミングが合えば、ガイドライン委員として食道癌診療ガイドラインや内視鏡外科診療ガイドライン等の作成に携わることもできます。
がんプロ大学院3年次に、埼玉医科大学国際医療センター胃外科への出向の機会をいただきました。腹腔鏡下胃切除のパイオニアでいらっしゃる櫻本信一教授のもとで多くの執刀機会をいただき、まさに筆舌に尽くし難い貴重な1年間を過ごしました。ハイボリュームセンターでの執刀経験を積んだ後にチーフとして大学に戻ると、レジデントの頃には見えなかったものが見えるようになり、これまで以上に一例の手術から得られるものが多くなりました。手術は理解が深まれば深まるほど面白くなっていくことに改めて気付かされました。
このように大学の4年間では、より高いレベルでの臨床経験を積み、日本外科学会専門医および日本消化器外科学会専門医を取得するとともに、Academicな仕事を行って博士号を取得し、医師としての幅を広げられたと思います。
後期臨床研修終了後には、関連病院に出張し、いよいよ一外科医として本格的に仕事を始めることになります。現在、主に胃癌、食道癌の患者さんを担当させていただき、手術漬けの日々です。切除不能癌の化学療法も担当し、内視鏡的切除以外のすべてで癌診療に携わっています。大学での4年間で培った上部消化管疾患に関する最新の知見を還元し、自分が担当させていただく患者さんに、最善の医療を提供できるように日々考えながら過ごしています。手術手技に関しても、大学帰局前の経験、埼玉医大での経験、その後のチーフとしての大学での経験、すべてがつながって、今の自分に生かされていると感じています。大学を出てからも、手技検討会等で定期的に情報交換する機会もあります。
慶應外科の研修プログラムでは、各年次で明確な目標があり、その機会を逸することなく努力を続けていけば、確実にstep upできるものになっていると思います。幸いなことに、医師10年目になりますが、毎年、その年が一番充実していると感じながら過ごすことができています。
外科学教室へ入局するまで、そして、入局してからの経験をお伝えさせていただきました。後輩の先生方がキャリアパスを考えるにあたっての一助となれば幸いです。
北川教授が会頭を務められた国際食道疾患会議(ISDE 2018 World Congress)オーストリア・ウィーンにて 上部消化管班の先生方と
定期的に開催される上部消化管班のビデオクリニック後の懇親会(写真はコロナ禍前)
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