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Study abroad experience 留学体験記

米国テキサス州ヒューストン The University of Texas M.D. Anderson Cancer Center (MDA)への研究留学

平田 雄紀(2011年卒)

留学体験記

こんにちは、慶應義塾大大学医学部一般・消化器外科の平田雄紀です(2011年卒)。
私は2021年8月より米国テキサス州ヒューストンにあるThe University of Texas M.D. Anderson Cancer Center (MDA)に研究留学をさせて頂いております。

研究所紹介

ヒューストンは、全米第4の人口を抱えるテキサス州最大の都市です。全米で最もダイバーシティが進んでいる都市と言われており、多種多様の人種が集まっています。
石油・エネルギー産業の米国最大拠点であり、日本企業からの駐在員も多くいらっしゃいます。また映画アポロ13号の「Houston, we have a problem」で有名なNASAの管制塔があるジョンソン宇宙センターがあり、宇宙飛行士が住む街としてしても知られています。
そしてTexas Medical Center (TMC)という医療特区があることでも有名です。TMCには50以上の医療研究機関、4つの医学部が集結し、米国のみならず世界中から科学者が集まってきています。その中の一つにMDAがあります。
MDAは「Making Cancer History」のスローガンの下、 癌の撲滅に本気で取り組んでいる全米有数の癌センターです。

MDAの本院

Surgical Oncology 部門の研究室が入るPickens tower

研究環境

私はMDAのSurgical Oncology 部門に所属しています。ここには慶應義塾大大学医学部一般・消化器外科の先輩である生駒成彦先生がFacultyとして臨床の第一線でご活躍されています。私は生駒先生のポスドクとして在籍し、その偉大な先輩の背中を間近で見ながら研究を進めています。

私の専門は上部消化管疾患ですので、生駒先生の進める国際共同臨床研究等のサポートをしながら、主に食道癌や胃癌を対象にこちらのデータを使って解析を進めています。
また、並行してTMC内のテキサス大学にて臨床研究について学ぶMaster of Science 講座を受講しています。ここでは疫学や医療統計、研究デザインのみでなく、Quality improvement(医療の品質管理)やImplementation and dissemination(エデンス構築後の導入と普及)等の医療全体を俯瞰した学問を学ばせてもらっています。
日本とは異なる医療制度の下で発展した米国ならではの学問を学びつつ、従来のOutcomeにとらわれない、QOL・費用対効果等を含めた双方的で総合的なOutcomeを指標とした低侵襲手術や集学的治療のtotal benefitを解析していきたいと思っています。

IGCC2022@HoustonにてMDAの胃外科の先生達と
左よりBadgwell先生、Mansfield先生(会頭)、生駒先生、平田

MSコースのクラスメートや同じ研究室にいるフェローやポスドクは総じてアカデミックマインドが高く、日々の中で刺激をもらっています。
外科FellowのWitt先生とは生駒先生の指導の下、Robot手術の術後Opioid使用量における効果について共同で研究を行いました(私が胃癌、Witt先生は膵癌を担当)。先日その結果をTrainee Research Dayという年一回行われるMDA内のOral Competitionでプレゼンし、それぞれがQI研究部門で1st prize を獲得することができました。この経験は私自身大きな自信になりました。

共同研究したWitt 先生と

公私ともにお世話になっている生駒先生と

日々の暮らし

ヒューストンは様々な人種やバックグラウンドの人が暮らす街であり、気さくで陽気な人が多いです。エレベーターや街角で声をかけられることも多々あります。土地が広大かつ原油が取れる地域であることから、駐車料金やガソリンの値段が安く、多くの人が車を所持しています。街全体が車生活用作られているため、車さえあれば不便はありません。

TMCで働く日本人研究者や日本からの駐在員が多いこともあり、日本食レストランや日本食スーパーは充実しています。日本からの輸入品は関税がかかって高いということを除けば、日本食には困らない環境です。またヒューストン日本人会やヒューストン三田会等の日本人コミュニティーも充実しています。
TMC内にはMDAだけでなく近辺の研究施設に多くの日本人研究者が在籍しています。Kubo’s会というTMCで働く日本人研究者の会が定期的にあり、時折日本人研究者同士で集まって楽しく情報交換をしています。

研究室の同僚達と

ヒューストンでの休日

ヒューストンは野球のアストロズ、バスケットのロケッツ、アメフトのテキサンズの本拠地であり、スポーツ観戦を楽しむことができます。特に野球の強豪アストロズの地元人気は高いです。

またヒューストンの観光名所はなんといってもNASAのスペースセンターです。市街地から車で30分程のところにあります。数々のロケットや宇宙飛行士の訓練施設が実際に観れたり、月や火星の石が実際に触れたりします。我々家族(妻、息子(4歳))は全員が大はまりし、年間会員となって月に一度は訪れています。さらには日本人会等の集まりで日本人宇宙飛行士さんとお会いしてお話しできたりする機会もあり、宇宙に近いヒューストンならではの貴重な体験となっています。

NASA space center Houstonにて
アポロを月に届けたSaturn Vロケット(全長150m)の前で

ヒューストンマラソンにて

個人的には1月に開催されたヒューストンマラソンに出場したことが一つの大きな思い出です。渡米直後これまでの手術室や病棟を行き来していた生活と打って変わり、全く動かない日々が続いたため、運動不足解消+ストレス発散のためにジョギングを始めました。そこでジョギングを継続するためにも、マラソンに参加してみようという意識が芽生え、先日人生初のフルマラソンに挑戦してきました。
42.195kmはさすがに苦しかったですが、なんとか目標タイムを切って完走することができました。海外ならではのスタート前のお祭り騒ぎや沿道の応援を味わうことができました。走り終わってみればつらさよりも達成感のほうが勝っている気がするので、来年も挑戦する予定です。

ヒューストンマラソンにて

これから

日本とは全く異なる文化・医療背景を持つ地で学べていることは、一人の人間としても一人の医師としても大きな経験となっています。留学期間中できる限りのことを吸収し、帰国後に還元したいと思います。

最後になりますが、私に留学の機会を与えてくださった北川雄光教授、慶應義塾大学医学部一般・消化器外科の先生方にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。

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