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慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科 上部消化管班

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食道の良性疾患

食道アカラシアとは

食道と胃のつなぎ目には下部食道括約帯(lower esophageal sphincter;略してLESレスと呼びます)と呼ばれる部位があり、普段はカメラのシャッターのように閉じており、胃の内容物の食道への逆流を防止しています。

食べ物を飲み込むと、食道の筋肉が上から下に向かって順序よく動いて、食べ物を食道から胃に運んでいきます。この際、LESは緩んで、ちょうどシャッターが開いたような状態になるので、食べ物がスムーズに胃に流れていきます。このLESの緩むという機能に障害を生じた病気が食道アカラシアです。

食べ物がうまく食道から胃に流れていかないため、食べ物が食道に溜まってしまい、食道が少しずつ太くなってしまいます。症状としては飲み込みにくさ、食べ物の口や鼻からの逆流、胸の痛みなどがあります。約10万人に1人が発症するといわれています。

良性疾患なので、アカラシアが直接の原因となって死亡することは基本的にはありません。ただし、通常の方より食道がんになるリスクが高いといわれているので、定期的に検査を受けるなどの注意が必要です。

検査

アカラシアの検査として、食道内圧検査、バリウムによる造影検査、食道内視鏡検査があります。
病期の進行具合によって下の表、図1のように分類されます。いずれの検査も外来で実施可能です。


図1 食道アカラシアX線拡張型分類

治療・治療方針

現在、日本での主な治療方法は3つあります。

  1. 薬物療法(飲み薬による治療)
  2. バルーン拡張術(内視鏡下に風船で拡げる治療)
  3. 外科的治療(手術による治療)

いずれの治療もLESの機能を完全に正常に戻すことはできませんが、LESの圧を緩めることによって、食べ物の通りをよくすることを目的とした治療です。

1.薬物療法(飲み薬による治療)
カルシウム拮抗薬や亜硝酸薬といった血圧を下げる薬を飲むことによって、LES圧を下げます。劇的な効果は期待できず、血圧が下がりすぎるといった副作用が出る場合もあります。他の治療を受けていただくまでのつなぎの治療として使用されることが多いです。
2.バルーン拡張術(内視鏡下に風船で拡げる治療)
内視鏡で観察しながらLESでポリエチレンバルーンを膨らませることによって、食道の筋肉を引き伸ばして、LES圧を低くします。手術と比べて身体にかかる負担が少なく、繰り返しできるというのが長所です。初回治療の有効率は95%で、1~2回のバルーン拡張術で約半数で長期間にわたって症状が良くなりますが、既に進行した病期や若年者のケースでは効果があまり期待できない場合もあります。
3.外科的治療(手術による治療)
食道から胃にかけての筋肉を一部切ってLES圧を下げてから、胃の一部を食道に巻きつけることによって胃内容物の食道への逆流防止機構を付け加える、Heller and Dorという手術があります(図2,3)。従来からの開腹による手術と、小さな傷で身体への負担を軽減できる腹腔鏡による手術があります。

  • 図2 食道胃接合部筋層切開
    (Heller Myotomy)

  • 図3 食道噴門部逆流防止手術
    (Dor fundoplication)

原則としては、まずは2のバルーン拡張術で治療して、症状が良くならない方、既に病期が進行している方などが3の外科的治療を受けるのが望ましいとされてきました。しかし最近では、これまでの欧米の報告ではバルーン拡張術よりも手術のほうが良好な症状改善効果を示していることから、熟練した外科医がいる施設では患者さんの希望によっては初回から外科的治療が施行されるようになってきています。

慶應義塾大学病院での取り組み


図4 腹腔鏡下手術後の傷跡
(個人差があります)

当院での治療実績
当院では1977年からHeller and Dor手術を施行しており、1994年から腹腔鏡下手術(図4)を導入しています。1998年から2008年まで86例(腹腔鏡下手術73例、開腹手術13例)の手術を施行しており、手術死亡率は0%で、手術後に症状改善がまったくみられなかった症例は1例(1%)のみでした。当院でのアカラシアの手術はすべて、食道を専門とする日本内視鏡外科学会技術認定医のチームが担当いたします。

食道アカラシアに関してお悩みの方はまずは外来でご相談ください。
(表 図1-3は「竹内裕也ほか, 食道アカラシア, 日本臨床消化器内科2008 Vol.23 No.4」より抜粋)

胃食道逆流症とは

胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease: 略してGERDガードと呼ばれています)とは胃酸を中心とする胃の内容物が食道や口の中まで逆流して、胸やけなどの自覚症状が出たり、食道の粘膜がただれて炎症を起こしてしまう病気です。

食道と胃のつなぎ目には下部食道括約帯(lower esophageal sphincter;略してLESレスと呼びます)と呼ばれる部位があり、普段はカメラのシャッターのように閉じており、胃の内容物の食道への逆流を防止しています。食べ物を飲み込むと、食道の筋肉が上から下に向かって順序よく動いて、食べ物を食道から胃に運んでいきます。この際、LESは緩んで、ちょうどシャッターが開いたような状態になるので、食べ物がスムーズに胃に流れていきます。胃食道逆流症の方は、LESが食べ物の飲み込みと関係なく緩んでしまったり、または常に緩みっぱなしとなり、胃の内容物が食道へ逆流する原因となっています。

胸やけ以外にも、口まですっぱいものがあがってくる、食べたあとにムカムカする、胃や胸が痛むといった症状があります。また、慢性的な咳の原因となっていることもあります。良性疾患なので、胃食道逆流症が直接の原因となって死亡することは基本的にはありません。

検査

胃食道逆流症の検査として上部消化管内視鏡検査、食道内圧検査、24時間食道pH検査があります。
いずれも外来で実施可能な検査です。

治療・治療方針

胃食道逆流症の治療は、大きく分けて、

  1. 生活習慣の改善
  2. 薬物療法(飲み薬による治療)
  3. 外科的治療(手術による治療)

などがあります。

  1. 生活習慣の改善には、食べ過ぎや深夜の飲食は避ける、便秘や肥満に注意する、などがあります。
  2. 薬物療法は胃酸を抑える薬を飲むことによって、胃酸の食道への逆流を少なくします。プロトンポンプ阻害薬という薬がきわめて有効です。胃内容物の逆流は減りませんが、胃酸の逆流が少なくなることによって、約9割の方の自覚症状や食道の炎症が改善します。ただし慢性疾患なので、内服を中止すると再発しやすく、長期間の内服が必要となることが多いです。
  3. 図1 Toupet手術外科的治療では、胃の内容物の逆流を防止する手術を施行します。当院ではToupet手術とよばれる胃の一部分を食道の後ろから約2/3周巻きつける術式を選択しています(右図)。手術適応となるのは、2.の薬物療法が有効でない方が中心となります。ただし、自覚症状が中心となる病気なので、患者さんが長期間の薬物療法を希望せず、手術を希望する場合も手術をする場合があります。
慶應義塾大学病院での取り組み
当院での成績

当院では逆流防止手術を15年以上前から手がけており、現在では腹腔鏡下手術(図2)を標準術式として導入しています。1996年から2006年まで45例の手術を施行しており、近年のアンケート調査によると(45名中26名回答)、手術前後で8割以上の患者さんに症状の改善が認められております。当院での胃食道逆流症の手術はすべて、食道を専門とする日本内視鏡外科学会技術認定医のチームが担当いたします。

お薬の治療で症状の改善がなかなか認められないという方は、是非一度ご相談にいらして下さい。


図2 腹腔鏡下手術後の傷跡(個人差があります)

NOTES

疾患について

NOTESとはNatural Orifice Translumenal Endoscopic Surgeryの略で、胃や膣などの人体に自然に備わっている管腔臓器から軟性内視鏡を挿入して腹腔内にアプローチし、胆嚢や虫垂などの手術を行う新しい腹腔鏡手術です。切除臓器はアプローチした口や膣から取り出すため体表面にまったくキズを作らず、従来の腹腔鏡手術よりも更に低侵襲な新しい治療法として非常に注目されています。2004年にJohns Hopkins大学のA.N.Kallooらによりこの概念が提唱されて以来、全世界的にNOTESの研究は盛んに行われ、動物実験から人への臨床応用まで徐々に進んできていますが、普及には安全なアクセス経路の確立や消化管臓器を経由した感染のコントロール、術中偶発症への対処など未だ様々な課題が残っており、わが国ではNOTES研究会を中心として安全性と有用性の評価が進められています。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では倫理委員会およびNOTES研究会の審査を得て、「経腟ポートを併用した腹腔鏡手術の臨床研究」という取り組みを行っています。閉経後女性を対象として、胆嚢摘出術、虫垂切除術、腹腔内臓器生検を行うものです。上部消化管の分野では胃粘膜下腫瘍に対する胃局所切除を行う計画です。手術の主たる操作は腟から行いお腹にはほとんどキズが残りません。既にこの手術を行った患者さんでは、体表面には手術をしたことがわからないぐらい小さなキズがおへそにあるだけで整容学的に優れた結果が得られています。また痛み止めを必要としないぐらい痛みが軽いという点も大きなメリットといえます。


(図 NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)
北野正剛, 田尻久雄,NOTES研究会白書作成ワークキンググループ.
NOTESに関する二学会合同委員会特別報告 NOTES白書:本邦におけるNOTES研究の指針 2008年3月.
日本内視鏡外科学会雑誌13(3), 257-262, 2008.

肥満外科

疾患について

肥満は怖い「病気」です。放っておくと糖尿病、脂質異常、高血圧、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、腎障害、関節障害、月経異常(不妊症)や、さらに冠動脈疾患や脳血管障害などの重篤な合併症をもたらす可能性があります。肥満治療の原理は簡単なものです。食べる量を減らし運動量を増やせば、体重が減り、そして糖尿病などの合併症も劇的に改善することがわかっています。生活習慣の改善や様々な内科的治療を行いますが、このような治療でも効果が得られない病的肥満の方に対しては外科的治療を考慮することがあります。

治療・治療方針

肥満に対する外科的治療については、日本肥満症治療学会による“日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのステートメント2010”というものがあります。そこでは以下のように述べられています。

手術適応となる肥満症患者は年齢が18歳から65歳までの原発性(一次性)肥満であり、内科的治療を受けるも十分な効果が得られず、次のいずれかの条件を満たすもの。

  1. 減量が主目的の手術(Bariatric Surgery)適応は、BMI 35以上であること。
  2. 併存疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の手術
    (MetabolicSurgery)適応は、BMI 32以上であること。

当院においても、以上のような患者様に対して外科的治療法を考慮しております。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院では主に内視鏡・腹腔鏡にて治療を行います。

1. 内視鏡下胃内バルーン留置術

内視鏡下胃内バルーン留置術は、内科治療と外科治療の中間に位置付けされます。通常の胃カメラで行う治療で、胃の中にシリコン製の風船を膨らまし留置することにより一度に食べられる量を制限し、少量の食べ物で満腹感が得られるようにします。
 
2.腹腔鏡下胃緊縛法(ラップバンド®)

胃の上部にバンドを巻いて締め付け、食事摂取量を減らそうというものです。
締め付け具合は調節可能なものを用いています。
 
3.腹腔鏡下袖状胃切除術

胃の大部分を切除することにより、食事摂取量を減らそうという術式です。
 
4.腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術

この手術は胃を小さな胃と大きな残りの胃に分けます。食べ物が流れる小腸に大きな残りの胃からつながる胆汁と膵液を含む小腸をつなげます。こうすることで食事摂取量を減らし、吸収も抑えられると考えられています。ただし、手術後は残りの大きな胃の内視鏡検査などができなくなるので、適応は慎重にすべきだと考えています。
 
5.胆膵バイパス術

胃を切って小さくし、小腸を二つに切って、胆汁と膵液が食物に混ざるのを遅らせることにより食物摂取量を抑えて吸収も抑えようという手術です。
 
6.小腸バイパス術

小腸を二つに切って、食物が小腸内を通る距離を大幅に減らすことで吸収を抑えようという術式です。

当院では上記の術式などを個々人に対して適応をよく考え施行します。

単孔式腹腔鏡手術

腹部手術は開腹手術と腹腔鏡手術の二つに大きく分かれます。腹腔鏡手術では腹部に4、5箇所程度穴をあけます。さらにそこにカメラや鉗子などの手術器具を通し、カメラの画像をみながら手術を行います。このような腹腔鏡手術は1990年代より普及してきました。

単孔式腹腔鏡手術はSILS(Single Incision Laparoscopic Surgery)やSPS(Single Port Surgery)のとも呼ばれ、文字通り、1箇所の傷のみで手術を行う腹腔鏡下手術のことをいいます。写真1のような、1箇所の傷からカメラと複数の鉗子を入れることができるポートを用いて行っております。傷をおへその中に作ると、傷跡は写真2のように、ほとんど目立たなくなります。


  • SILS™ポート
    写真提供:コヴィディエン ジャパン(株)

  • 写真2

単孔式腹腔鏡手術における最大の利点は、整容上優れていることです。一方で今まで腹部の様々な部位に入れていた手術器具・カメラをすべて1箇所に集中させた結果、手術操作は従来の腹腔鏡手術と比較して大きく制限されます。そのため単孔式腹腔鏡手術を行うためには高度な技術が必要とされています。また、すべての腹部手術が単孔式腹腔鏡手術の適応となるわけではありません。

これまで私たち上部消化管班では、全国に先駆けて胃GIST食道アカラシア逆流性食道炎の手術などに単孔式腹腔鏡手術を行ってきました。一方で癌の手術においては整容性よりも根治性を目指さなくてはいけない点から、現時点では単孔式腹腔鏡手術を行うことは制限されることが多いです。手術をこれから予定されている方で単孔式腹腔鏡手術に興味をお持ちの方は、まずは担当医へご相談ください。

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