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Gastrointestinal Stromal Tumor 消化管間質性腫瘍

GISTとは?

GIST(消化管間質腫瘍)とは、消化管の粘膜下層といわれる部分から発生する粘膜下腫瘍の一種です。一般的にがんは消化管の粘膜から発生する悪性腫瘍のことを示すので、がんとは異なります。粘膜下腫瘍は様々な種類がありますが、GISTは最も頻度が高く、約7割が胃に発生します。GISTは、c-kit遺伝子という遺伝子の突然変異によるKIT蛋白の異常によりおこり、細胞が異常増殖を起こす腫瘍です。50~60歳代に多く、頻度としては5万人に1人の割合といわれており、良性のものから転移を起こすものまで悪性度も様々です。特有の自覚症状はありませんが、腫瘍が大きくなるにつれて腹部の違和感、腹痛、吐き気などが生じる場合があります。さらに大きくなると食べ物の流れ道を塞いだり、出血を起こしたりする場合もあります。しかし、大抵の場合無症状であるため検診で発見されることが多いです。

GISTの検査

上部消化管内視鏡(胃カメラ)や超音波内視鏡、CT検査、MRI検査などの検査で腫瘍の大きさや性質、深達度、転移の有無を確認し、治療方針を決定します。GISTかどうかの確定診断は内視鏡の際に組織を取り出し、顕微鏡で詳細に調べる病理診断によって決まります。しかし、消化管表面に腫瘍が顔を出さないことが多いため確定診断は困難です。また、超音波内視鏡を用いて病変を目がけて細い針を刺して組織や細胞を採取する超音波内視鏡下穿刺吸引術という方法により病理診断を行う場合もありますが、手術をしてみないとわからない場合もあります。

粘膜下腫瘍の治療

当院では、GISTガイドラインに沿った治療を行っております。
胃粘膜下腫瘍のうち、GISTの診断がついた場合には外科的完全切除が第一選択になります。しかし、GISTは切除前の確定診断が難しく、胃粘膜下腫瘍の中にはGIST以外の良性腫瘍も含まれます。そのため、たとえGISTの確定診断がつかなくても、胃粘膜下腫瘍の中で悪性を疑わせる所見がある場合には切除を行います。悪性を疑わせる所見とは、①腫瘍径が2cm以上 ②腫瘍径の急激な増大 ③腫瘍の表面に凹みを伴うもの
などが挙げられます。悪性を疑わせる所見がない場合は胃カメラなどを用いた定期的な経過観察となります。もしGISTのうち、転移があって切除不可能な場合は、薬物療法を行います。
外科的切除では、通常の開腹手術の他、低侵襲な腹腔鏡の手術も行われます。腫瘍の部位や大きさ(5cm以上は開腹になります)や形状などを考慮し、腹腔鏡に適さない場合は開腹手術が勧められます。
薬物治療では、KIT蛋白に選択的に作用するグリベックという分子標的治療薬を使用します。これは、通常の抗がん剤よりも副作用が少ない一方で、高い治療効果が期待されるものです。

慶應義塾大学の特色

当院は、胃粘膜下腫瘍やGISTに対する腹腔鏡手術における先駆け的な施設であります。 また、胃を切除する範囲を小さくするために、2012年より内科・外科合同のチームで行う腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)という手術を導入致しました。
LECSでは、手術の際に腹腔鏡とともに胃カメラ(内視鏡)を使用します。内視鏡と腹腔鏡の両者を使うことで、腫瘍を傷つけること無く、かつ胃の壁の切除範囲を最小限にして腫瘍を切除することが可能になりました。切開した部分は腹腔鏡を用いて自動縫合器や手術用の糸(縫合糸)を使用して縫い閉じます。特に切除した範囲が噴門や幽門にかかる場合は、1本ずつ手で縫い合わせ、狭窄を予防します。

LECSは十分に低侵襲な手術ですが、腫瘍を切除する際に胃液が少量体の中に漏れ出てしまうことがあります。通常は問題にならない程度の量ですが、腫瘍が胃の内側に露出している場合(Delleと呼びます)、露出した腫瘍に触れた胃液が体の中に漏れ出ることで、腹膜播種を起こす可能性があります。そこで当院では非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術(NEWS)という手術をいち早く導入致しました。

NEWSではまず、腹腔鏡を用いて胃の壁の外側半分(漿膜・筋層)のみを腫瘍のすぐ外側で切開し、切開された部分を縫い閉じます。これは非常に細かな作業であるため、1本ずつ慎重に手で縫い閉じます。
さらに、内視鏡を用いて胃の壁の内側半分(粘膜・粘膜下層)を腫瘍のすぐ外側で切開し、腫瘍を切除します。切開された部分は内視鏡を用いて内視鏡用のクリップや糸を用いて縫い閉じます。切除された腫瘍は患者様の口から取り出します。
このようにNEWSでは段階的に胃の壁を縫い閉じることで、胃液を体の中に漏らすことなく腫瘍を切除することが可能です。

A

B

C

D

A:まず内視鏡で腫瘍の位置を確認しマーキングする。

B:腹腔鏡で腫瘍周囲の漿膜筋層を切開し、内反するようにスポンゼルを留置し縫縮する。

C:再び内視鏡で全層切開し腫瘍を摘出する。

D:経口的に腫瘍を回収する。

これまで広く行われてきた腹腔鏡下胃局所切除術に加え、当院ではこれらLECS等の新しい手術を導入し、より個々の患者様に適した治療を選択することが可能となりました。

受診をご希望の患者様へ

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当院の実績について

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多くの治療実績を有しています。
詳細は実績ページにてご確認ください。

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