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慶應義塾大学医学部 一般・消化器外科 上部消化管班

胃がん

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疾患について

胃がんは胃粘膜の上皮細胞から発生する悪性腫瘍で、近年まで我が国の死因の第一位を占めていました。最近は減少傾向にありますが、依然として男性は肺がんに次いで第二位、女性は大腸がんに次いで第二位の死亡数です(厚生労働省:平成18年人口動態統計より)。

自覚症状

早期胃がんでは症状がないことが多く、進行するにつれて胸やけ、みぞおちの痛み、食欲不振、吐き気、貧血、体重減少、吐血(コーヒー色の嘔吐)・下血(黒色の便)、腹部にしこりを触れる、などがみられます。これらの症状には胃潰瘍、胃炎などと共通するものがあり、胃がんの早期発見のためには定期的に内視鏡(胃カメラ)や上部消化管X線検査(バリウム検査)を行う必要があります。

検査

診断は、内視鏡(胃カメラ)、上部消化管X線検査(バリウム検査)を用いて行い、胃がんが胃のどの範囲に広がるか、どの深さまで浸潤しているかを調べます。胃壁は内腔側つまり食べ物が通る側から外側に向かって、粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜と大きく6層からできています(図1)。


図1 がんの深さ(オリンパス おなかの健康ドットコムより引用)

胃がんは粘膜から発生し、次第に深くにおよんでいき、がんの浸潤が粘膜下組織層にとどまっているものを早期胃がん、がんが筋層から漿膜層の範囲まで浸潤したものを進行胃がんと呼んでいます。

また、がんは進行するにつれてリンパ節転移や、肝臓・肺などに遠隔転移を起こすため、CTスキャンや超音波検査を行います。

胃がんの進行度は、T:胃がんそのものの拡がり、N:リンパ節転移の拡がり、H:肝転移の有無、P:腹膜播種の有無、CY:腹水にがん細胞が混ざっているかどうか、M:他臓器への転移の有無の6つの指標で評価されます。これらを総合して病期(Stage)の判定が行われます。

治療・治療方針

治療法には、内視鏡治療、外科手術、化学療法、放射線療法などがあり単独またはこれらを組み合わせて治療します。

治療方針は、胃がん治療ガイドラインにのっとり、病期の他に、腫瘍の大きさ・部位・拡がり、患者さんの全身状態や患者さんの希望など様々な要素を考慮してカンファレンスで討議のうえ決定し、個々の患者さんにとってベストな治療法を選択します。

内視鏡治療

内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)
内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)(図2)


図2 ESD手順(オリンパス おなかの健康ドットコムより引用)

内視鏡(胃カメラ)で観察しながら、胃の中から胃がんを切り取って回収する方法です。胃の粘膜だけを切除するので胃が全て残り、全身麻酔や体の外側にメスを入れる必要がないため患者さんへの負担が少ないのが最大の利点ですが、ごく早期の胃がんに適応されます。具体的には、早期がんのうちでも粘膜にとどまるがんであり、かつ分化型腺がん(たちのいいがん)の場合に限られます。内視鏡治療の場合入院期間は3日~5日程度です。

外科手術


図3 腹腔鏡下幽門側胃切除術後の創
通常の開腹手術に比べ、
半分以下の創となっています。

胃の2/3以上の切除と2群リンパ節までの郭清を行う定型的胃切除術の他に、早期の病変に対しては、リンパ節郭清範囲の縮小や切除範囲を小さくした胃局所切除術、胃分節切除術を行っています。また、従来の手術より創が小さく(図3)、術後の苦痛が少ない腹腔鏡手術を行うことにより術後の早期回復を図っています。外科手術の場合、入院期間は13日~15日程度です。

化学療法
化学療法とは、抗がん剤を用いた治療です。治療の基本は切除ですが、切除できないほど進行したがんや手術後に再発したがんに対して用いたり、手術前に抗がん剤を投与してがんを小さくしてから手術する術前化学療法、進行がんでリンパ節転移があった際手術後に再発予防目的に投与する術後化学療法として用いたりします。化学療法のみによる完全治癒は現時点では困難ですが、最近の進歩により高いがん縮小効果を実現できるようになってきており、今後さらに優れた抗がん剤が登場すると期待されます。

慶應義塾大学病院での取り組み

当院の体制
一般・消化器外科上部消化管班、消化器内科、放射線科の合同カンファレンスで術式などの治療方針を決定し、各科と連携を取り集学的治療を行っています。
低侵襲治療
胃粘膜がんに対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)はもとより、その適応外となる早期胃がんに対して腹腔鏡を利用した低侵襲手術を積極的に施行しています。これにより、手術後の痛みの軽減、手術後早期の回復、入院期間の短縮などに成功しています。また、当科では4センチ以下の早期胃がんに対してセンチネルリンパ節生検を行い、一人一人の患者さんごとに個別化した過不足のない適切なリンパ節郭清の手技開発を進めています。そのほかGIST(gastrointestinal stromal tumor: 消化管間質腫瘍)などの胃粘膜下腫瘍(submucosal tumor: SMT)や消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)の穿孔性腹膜炎や、切除不能がんに対する胃空腸吻合においても積極的に腹腔鏡手術を行い良好な成績を得ています。
進行胃がんに対する集学的治療

当科では抗がん剤TS-1と低用量のシスプラチンによる多剤併用化学療法を開発し、その良好な治療成績を報告してきました。またこれに放射線療法を加えることで、さらに治療成績の向上が見込めることから、その有効性・安全性について臨床研究を進めています。実際に胃巨大腫瘍や肝転移が消失した症例も少なからずみられたことから、我々は臨床の事象を裏付け得る基礎的・実験的検討を試み、より効果ある治療方法を模索しています。


  • 図4-1 化学放射線療法前の内視鏡所見
    胃の上部に巨大な潰瘍を
    伴うがんを認めています。

  • 図4-2 化学放射線療法後の内視鏡所見
    潰瘍と発赤の範囲が著明に縮小しました。
    切除後の病理検査ではがん細胞が
    すべて消失していました。
当院での治療実績

2014年の全胃がん治療例は286例です。そのうち、外科手術症例は123例(幽門側胃切除術は開腹手術24例、腹腔鏡下手術43例、胃全摘術または噴門側胃切除術は開腹手術22例、腹腔鏡下手術13例、その他21例)です。早期胃がんの内視鏡治療症例(ESD・EMR)は163例です。

  幽門側胃切除 胃全摘・
噴門側胃切除
その他 ESD・EMR
  開腹 腹腔鏡 開腹 腹腔鏡
2005年 43 17 40 0 14 73 187
2006年 60 48 45 1 12 86 250
2007年 56 64 40 5 25 132 322
2008年 51 56 35 6 12 140 300
2009年 50 55 33 7 13 138 296
2010年 27 42 34 12 9 150 274
2011年 36 57 66 15 11 152 337
2012年 26 40 30 13 7 146 262
2013年 16 60 14 12 11 148 261
2014年 24 43 22 13 21※ 163 286

※センチネルリンパ節生検症例を含む。

胃がん

1.色素散布

2.マーキング

3.4.切開、粘膜下層の剥離

5.切除完了

6.切除後

治療2ヶ月後


瘢痕を認めるのみとなりました。

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