タバコを吸っているまたは吸っていたことの指標に“喫煙指数”というものがあります。これは、「喫煙していた合計の年数」×「一日に吸っていたタバコの本数」で算出します。
食道癌の場合、喫煙指数が800以上の方は術後に肺炎になる危険性が2倍以上になると言われています。肺炎は食道癌の術後合併症で死に至る可能性の高い合併症であり、術後に肺炎を発症された方は予後が悪くなる可能性が1.5倍高くなるという報告もあります。
この傾向は食道癌だけではなく、我々が治療の対象としている他の癌でも同様です。胃や大腸、肝臓や胆嚢・膵臓の手術でも同様の結果が報告されています。喫煙指数が800以上の方は特に注意が必要ですし、手術においてタバコが合併症や予後の面で不利に働く傾向は喫煙指数が400以上の方から明らかになってくると言われています。
このようなことから私たちは原則として、初めて我々が診察・治療を開始した段階で皆さんに禁煙をしていいただいています。万が一手術の前にまだ喫煙をしていらっしゃった場合、禁煙の上、手術を1ヶ月以上延期いたします。
また、タバコを吸っていらっしゃる、または吸っていた方は下の表のような発癌リスクがあるといわれています。つまり、今回の手術・病気を乗り越えても次の病気のリスクが高いということです。次の病気のリスクを下げ、次の病気の治療をスムーズに行うためにも禁煙をお勧めします。
当科では、外来・入院中にご喫煙の有無を伺い、可能な限り速やかな禁煙に向けて患者様と共に取り組んで参ります。ご自身・ご家族だけでは禁煙が困難な場合は医師にお申し出ください。禁煙外来などのご案内もさせていただいております。
タバコによってリスクが大きく上がるがんの種類
がんの種類 | 非喫煙者と比べたがん死亡リスク | すべての原因のうち、喫煙の占める割合 |
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咽・喉頭がん | 30倍 | 60~90% |
肺がん | 4.5倍 | 72% |
食道がん | 2.2倍 | 48% |
胃がん | 1.5倍 | 25% |
肝臓がん | 1.5倍 | 28% |
すい臓がん | 1.6倍 | 28% |
膀胱がん | 1.6倍 | 31% |